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研究室

グリーン資源化学研究室

Green Chemical Resources



スタッフ

  • 教授

    河原 成元

    グリーン資源化学研究室

研究内容

天然ゴムは、砂漠に育つグアユールから熱帯雨林に群生するパラゴムノキまで、2,500種類以上の植物によって生合成される二次代謝産物です。植物を伐採せずに傷をつけるだけで取り出すことができるため、天然ゴムは温室効果ガス(CO2)を吸収しながら持続可能な社会を構築できる原料として注目を集めています。私たちの研究室では、天然ゴムを原料とする化学(天然ゴム化学)を石油化学に代わる新しい化学として創成することにより、有機材料に関するカーボンニュートラルを実現することを目指しています。具体的には、天然ゴムを精製・乾燥し、精製した天然ゴムに種々の有機反応(天然ゴムの反応)を施し、セルロース、リグニン、キチン、キトサン等と天然ゴムを複合化(天然ゴムの複合化)し、天然ゴム複合材料のナノ構造を精密制御(天然ゴムのナノ構造制御)する新しい技術の開発に取り組んでいます。

1. 天然ゴムの精製

天然ゴムは、植物由来の原料であるため、タンパク質、脂質および炭水化物等の非ゴム成分を510 w/w%含んでいます。それ故、化学原料として天然ゴムを使用するためには、非ゴム成分を除去する必要があります。私たちの研究室では、ラボスケールの実験で、尿素、ドデシル硫酸ナトリウムおよびアセトンを用いてインキュベーションすることにより、天然ゴムからタンパク質を完全に除去することに成功し、タンパク質フリー天然ゴムおよびその製造方法に関する特許を取得しました。現在、タンパク質フリー天然ゴムおよびタンパク質を少量含有する低タンパク質化天然ゴムを大量生産する製造方法の開発に取り組んでいます。

 

 

2. 天然ゴムの乾燥

天然ゴムは、直径約1 μmのゴム粒子を水に分散した乳液(ラテックス)として植物から得られます。このため、天然ゴムは、ラテックスを凝固してから乾燥することにより固形化され、タイヤ等の原料として使用されています。これまで、天然ゴムは、ラテックスを酸凝固した後、細かく裁断してからエネルギーを大量消費する大型のオーブンを用いて約130 ℃2時間程度乾燥することにより製造されていました。これに対して、私たちの研究室では、瞬時(1分間)に天然ゴムを乾燥する技術を開発しました。現在、この乾燥をスケールアップし、天然ゴム、タンパク質フリー天然ゴムおよび低タンパク質化天然ゴムを大量に乾燥する技術の開発に取り組んでいます。

 

 

3. 天然ゴムの反応

天然ゴムの主成分であるcis-1,4-ポリイソプレンは、構成単位であるcis-1,4-イソプレン単位当たり1個の炭素炭素二重結合をもっています。この炭素炭素二重結合は、アルケンの反応を応用することにより、種々の官能基に変換することができます。例えば、水素を付加することによりエチレンプロピレン共重合体、水を付加することによりプロピレンビニルアルコール共重合体、塩素を付加することによりエチレン-α-メチル塩化ビニル共重合体、二酸化炭素を付加することによりエチレンプロピレンカーボネート共重合体が合成できます。また、アリル位の炭素(炭素炭素二重結合に隣接する炭素)に対してラジカル的に種々の官能基を付加することもできます。とりわけ、アリル位に臭素を付加した天然ゴムは、リビングラジカル重合やクロスカップリング反応のマクロモノマーとして利用することが期待されています。私たちの研究室では、タンパク質フリー天然ゴムを原料として精密反応により人々の生活に役立つ高分子を合成することを目指しています。

 

 

4. 天然ゴムの複合化

天然ゴムは、自然界に存在する唯一のゴムです。それ故、硬い材料と複合化することにより硬さを調節しながら新しい材料を作ることができます。天然ゴム以外の植物由来高分子は結晶化していて硬いため、天然ゴムと複合化する割合や方法を工夫することにより、ゴム強化樹脂から樹脂強化ゴムまでバリエーションに富んだ材料を創製することができます。とりわけ、セルロースは、バルクからナノファイバーやナノ粒子まで形を変えることができるため、同じ割合で複合化してもモルフォロジーを精密制御するだけで物性が異なる材料を幾つも作ることができます。

 

 

5. 天然ゴムのナノ構造制御

私たちの研究室では、天然ゴムが天然由来のナノコンポジットであり、厚さ数十nmの非ゴム成分のマトリックス(ナノマトリックス)に直径約1 μmのゴム粒子が分散した不均一構造を形成していることを発見しました。このナノ構造は、多量成分が分散質となり少量成分がマトリックスとなっていたため、ナノマトリックス構造と名付けました。ナノマトリックス構造をもつ天然ゴムは、天然ゴムのエントロピー弾性を示すだけではなくナノマトリックスのエネルギー弾性も示すことから特異的な物性を示す構造として注目を集めています。私たちの研究室では、ナノマトリックス構造をもつ材料を創製することに加え、新しいナノ構造の探索も行っています。植物由来高分子の新しいナノ構造を発見し、その構造を模倣して新しい材料を作ることを目指しています。

 

 

研究室紹介動画