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【プレスリリース】生体骨の鉱化機構を模倣したアパタイトへの分子固定を実現 多賀谷 基博 准教授

2024.11.05


生体骨の鉱化機構を模倣したアパタイトへの分子固定を実現

物質生物系 多賀谷 基博 准教授は、骨再生におけるアパタイトとタンパク質の相互作用を模倣して、薬物分子がアパタイト表面のイオンに置換・配位する反応を見出し、それを活用した新たな分子固定化技術を提案しました。本研究によって、生体内の骨形成メカニズムの解明に寄与するだけでなく、ナノキャリアやバイオデバイスなどの分子による表面改質技術への応用が可能となります。
 
【ポイント】
・生体の骨を模倣して、薬物分子の安全で簡便な固定化法を確立した。
・骨再生でのアパタイトとタンパク質の相互作用を模倣することで、 カルボキシ末端を有する薬物分子の固定化と配向制御を実現した。
・薬物分子の配向は、アパタイト表面のイオンとの反応によって生じることがわかった。
・本研究の知見は、ナノキャリアやバイオデバイスなどの分子による表面改質技術へ応用できる。
 
現在、生体内の疾患部に薬物分子を送達するドラッグデリバリー技術が注目されています。従来、ナノキャリアに薬物を固定化する際、シランカップリング剤などの固定化するための分子 (リンカー分子) を介して共有結合によって固定化する手法が用いられています (図 1)。しかし、この方法では固定化プロセスが複雑なうえ、リンカー分子の生体毒性だけでなく、固定化に伴う薬物分子の変性(機能低下)の問題がありました。そのため、 薬物分子の立体性(機能)を維持しながらナノキャリアに安全・簡便に固定化する技術が求められています。これに対して本研究では、生体の骨の鉱化機構に着目しました。生体の骨におけるタンパク質は、カルボキシ末端(—COO -)を介してアパタイトに変性せずに固定されています。つまり、生体の骨の「鉱化機構 (図 2)」 の模倣によって、新たな固定化技術を創出できると考えました。そして、本研究では、生体の骨のカルシウム欠損型水酸アパタイトと炭酸イオン含有水酸アパタイトの生成機構を活用した薬物分子の固定化を実現しました。
 
論文タイトル:Biomimetic Immobilization of Carboxylated Porphyrin on Apatite
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.chemmater.4c01168
 

 

詳細は以下のPDFファイルをご覧ください。
https://www.nagaokaut.ac.jp/annai/koho/kisyakaiken/press/R6.files/20241028.pdf
 
【用語解説】
(*1)アパタイト : リン酸カルシウムの一種であり、生体の骨の主成分である。厚生省が認可した生体親和性に優れた 材料でもあり、バイオセラミックスとしてバイオ・メディカル分野で実用されている。
(*2)ナノキャリア : 薬物分子を担持し、疾患部位まで送達する母材。母材の粒径がナノメートルスケールの粒子を指す。

 

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