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【プレスリリース】化学とバイオが連携してリグニンからの芳香族ポリマー合成に成功 政井教授・上村准教授

2023.07.13


化学とバイオが連携してリグニンからの芳香族ポリマー合成に成功

物質生物系 政井英司 教授と上村直史 准教授は、弘前大学の園木 和典 准教授、竹内 大介 教授、樋口 雄大 助教(長岡技術科学大学 生物統合工学専攻 博士修了)、帯広畜産大学の吉川 琢也 准教授らとの共同研究により、リグニンから耐熱性芳香族ポリマーを合成することに成功しました。本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業 の支援を受けて行われました。
 
非可食バイオマスの主要成分であり芳香族化合物のリグニンは、芳香族素材の原料として注目されていますが、その構造の不均一さに対応できる技術の開発が課題でした。本研究グループは、Sphingobium sp. SYK-6株(注1)の代謝を利用することで、サルファイトリグニン(注2)を化学的に分解して生成する芳香族化合物の混合物を、バニリン酸注(注3)へと均一化できること、そしてこのリグニン由来のバニリン酸を用いて、耐熱性芳香族ポリマーの一つであるポリエチレンバニレート(注4)を合成できることを明らかにしました(図1)。本研究成果は、ポリマーに熱安定性や剛直性などの機能を与える芳香族化合物をリグニンから生産し、エンジニアリングプラスチック(注5)の原料として活用することが期待されます。
 本研究成果は、令和5年7月3日に国際科学誌「Bioresource Technology」のオンライン版で公開されました。
論文タイトル:Successful selective production of vanillic acid from depolymerized sulfite lignin and its application to poly(ethylene vanillate) synthesis
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960852423008787
 

 
図1 リグニンからのバニリン酸生産とそれを原料としたポリマー合成の概略図 
工業的に入手可能なサルファイトリグニンを原料として使用し、リグニン由来バニリン酸を代謝改変微生物を用いて生産することに成功しました。リグニン由来バニリン酸を利用したポリマーは、エンジニアリングプラスチックの原料として期待されています。

 
詳細は以下のPDFファイルをご覧ください。
https://msb.nagaokaut.ac.jp/wp-content/uploads/2023/07/230713.pdf
 
用語解説
(注1)Sphingobium sp. SYK-6株:リグニン由来の多様な芳香族化合物の分解能力を保持している細菌
(注2)サルファイトリグニン:パルプを製造するために、木材チップを亜硫酸で処理することで可溶化してパルプ画分と分離されたリグニン
(注3)バニリン酸:4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、HOC6H3(OCH3)CO2H、CAS 121-34-6
(注4)ポリエチレンバニレート:4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシ安息香酸(バニリン酸をヒドロキシエチル化した化合物)を多数連結させた高分子
(注5)エンジニアリングプラスチック:汎用プラスチックに比べて、耐熱性や機械的強度に優れたプラスチックの総称
 

関連リンク

微生物代謝工学研究室(政井英司 教授、上村直史 准教授)の研究室紹介ページ
微生物代謝工学研究室のホームページ